キュオスティがシュネー姫の専属になる前、専任の命をされる部分のお話です。
代々国の騎士として家名を背負い、現国王の元で勤めを果たす様になってから暫くしたある日。
国王のお付である参謀殿から呼び出しがかかった。
「エスコラ、参りました。」
「うむ。入れ。」
「はっ…。」
戸を開け執務室へ入るとそこには参謀殿と他に国王が列席していた。
「これは王…ご無礼致しました。」
膝を折り頭をさげ礼を取ると
「お主がエスコラか?」
「はっ…。父より家督を継ぎ、国に尽くすよう言われております。」
「ほぅ。父上は健勝か?あの豪胆な男がくたばっるとは露ほどにも思わぬがな。」
王はいうとハッハッハと、声に出して笑った。
「王、要件を…。」
参謀殿に促され、王はそうであったと俺に向き直ると手を取り立たせ、こういった。
「今日はな、そなたに頼みごとがあってこうして来て貰った。」
「はっ…。王の命であれば何なりと。」
「うむ。国に仕えるお主には、少しばかり酷かもしれぬが、エスコラ。お主には是非儂の娘を護って貰いたいと思っておる。」
王の申し出に流石に驚き顔を上げ王の顔を見る。
「姫…君を…で御座いますか…。」
「そうじゃ。国に王に仕える事を誉としてきたお前の家としては、姫の警護というのは不名誉な事かもしれぬが、
それでも、儂はお主に娘を警護して貰いたい。ダメか…?」
「いえ…王の命とあらば…。」
王が言う様に、我が家は代々王に仕える騎士を排出してきた。
そしてそれを誇りに思い、俺もそれに殉ずる事を誇りとしたいと思い、この王宮へやってきた。
だから、「姫の騎士に」と言われ、自分には王に仕えるほどの力量が足りないという事であろうか…。
それとも、姫君が好事家に攫われるのを防ぐために、騎士を募っている事は、俺も知っていた。
その兼ね合いで現状騎士の増えた今、もう我が家には用はないと?
色々な思いが脳裏を駆け巡り、父がしてきた功績や名声を思うと、自分がとても情けないものの様に感じ
家名の汚点となる事を恥じた。
だが、王の命は絶対である。
騎士としては顔に気持ちが出るなどと言う事は、未熟そのものであったと後に反省したが、
俺の曇った顔を王は見逃さず、続けてこういった。
「姫を護る事は、不名誉な事ではない。常にこの国の安全を脅かすものを排除してこその、騎士ではないか?
幸いにも今は儂には危機はおよばぬ。だが姫達には常に危険が隣り合わせの状態だ。だから危険の最善をお主に任せたいんじゃよ。」
王にそう言われてはもう引き下がる事など出来なかった。
「はっ…私は王の配下。命とあればいかようにも、謹んで拝命賜ります。」
と再び礼を取った。
「そうか、すまんな。」
と王は俺の肩に手を置くと
「詳しい事はこれに伝えてある。姫を…宜しく頼んだぞ。」と言うと、部屋を出て行った。
「さて、エスコラ。姫に仕えて貰うに当たってだな…。」
と参謀は手にした書類を観ながら、俺がこの先生涯仕える事になる姫について話始めた。
気持ちはまだ晴れやかではなかったが、これも与えられた命である。
王が大事にしている姫を護る事がこの国を護る事になるのであれば、俺は命を賭してその姫に仕えよう。
そう気持ちを切り替えながら、ぼんやりと話を聞いていた。
「で、これで最後になるが、お前が護るべき姫の名は。シュネー姫だ。御年17歳になられる。能力は感情による瞳の色の変化と纏う香りの変化という所だ。
何か…質問は?」
こう言われてハッと我に返る。
「いえ特に何もありません。」
「そうか。それでは一応の姫の詳細を渡しておく。目を通して無礼の無い様に気を付けたまえ。」
「は…。」
「あぁ、あと今日中に時間を都合して、姫の部屋へ行き挨拶をしに行ってくれ。今日お前がうかがう事は、
こちらから姫の方へは伝えてある。頼んだぞ?」
「分かりました。後程伺います。」
「うむ。それでは…頼む。」
「失礼いたします。」
参謀殿から書類を受け取り一礼をすると、踵を返し部屋を出た。
出た所で書類に目を落とす。
その書類の名前の部分には”シュネー”と記されていた。
「シュネー…姫か…。」
まだ見ぬその姫とこの先本当の意味で生涯を共にする事になろうとは…まだこの時の俺は露ほどの想像もしていなかった。。
to.be.continude...
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