『うちの子よその子ファボ妄想』その1。ラクシュミ×レイドさんの妄想。
登場人物:ラクシュミ。レイドさん(@Alba_mizuchi )。エドワルド君(@piyopiff)。
お借りしました。
「っ…はぁ~…やっぱり一人だと…辛いなぁ…。」
鎧に包まれていない所に小さな傷を彼方此方作り森を出ると、レイドさんと鉢合わせた。
「あ!レイドさん♪これから探索?」
ニコニコと駆けより声を掛ける。
「ああ、そうだ。ラクシュミは…戻った所か?」
「うん♪そう。今丁度戻ってきた所。あ、でもレイドさんがこれから探索行くなら、一緒してもいい?」
「…構わないが、傷は、良いのか?」
「えへへ。大丈夫。かすり傷だし。それに…強くなりたいから。」
と苦笑する。
「強く…か。」
「そう。強く…。さ、行こう!」
そう言って腕を取り引っ張ると共に歩き始めた。
暫く歩き森の深部へ向かう入口へと差し掛かった時、
「ラクシュミ、少し変わったな。」
と、不意に声を掛けられた。
その問いにずっと押えている気持ちがザワザワとしだす。
「え…?そうかな??」
誤魔化す様に、身体を柔軟しながら問いに答える。
「何をそんなに焦ってる…?」
と言われ、体を動かす事を止める。
”焦っている”とまるで心の中を見抜かれているようで、親しい彼には誤魔化す事など出来ないのかと、弱い心が大きく膨らみはじけそうだった。
「焦って何か…ないよ…?」
と口では言うものの、体が小さく震えだす。
その様子を見てレイドさんはつかつかと近寄ると俯いたままの私の肩を掴むと、真っ直ぐ立たせるように引き起こし顔を見た。
「じゃぁ何故今にも泣きそうな顔してる。」
と言われた瞬間…ポロポロと無意識に涙が頬を伝っていた。
「…っ!私…強くならないと…いけないの!こんな事で泣いてたら…いけないのよ…!」
叫ぶように言うとその場に膝から崩れ落ちてしまった。
誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。
誰かに甘えたかったのかもしれない。
色んな思いがあふれ出て一度溢れたら、止める事が出来なかった。
嗚咽しながら泣く私をレイドさんは引き起こすと傍らにある倒木へと座らせると、自らも隣へ座りじっと待ってくれた。
少し落ち着いて、涙を拭くと、
「エドワルドさんが…片目を失った事、あれは私の所為。アタシが弱かったから、甘えがあったから、あんな事になってしまった…。取り返しのつかない事になって、やっと私…騎兵である自覚が足らなかったって、気づいたの。」
泣きはらした目を向けて小さく自嘲気味に笑う。
「母の命を奪った森だから…真剣に探索をしていなかった訳じゃ、決してないけれど…。それでも、あの時私がもっとちゃんとしていたら…。もっと強かったら…。”庇われる”何てことされなくて済んだし、エドワルドさんが目を失う事もなかった。
あの時、私が逆に怪我をしていたら良かったのよ…!あの時…彼を失ってしまうかもしれない恐怖が…毎晩襲ってくるの。
エドワルドさんが元気になって、また一緒に探索へ出かけられるだろうか。また今度の様な事があったら、次は無事ですまないかもしれない…。一緒に…いられるだろうか…って。だから私、急いで強くならなきゃいけないのよ。彼を護れる様に…。もう、前の様には戻れないかもしれないって思うと…怖いの…。」
一気に吐き出す様に言うと、それまで静かにただ聞いていたレイドさんが
「そうか…そうだな。確かにラクシュミは弱い。近衛としても人としても未熟だと思う。」
「…ウン。」
改めて人にそう言われると胸にその言葉が突き刺さり、苦しくて顔がクシャっと歪むのが分かった。
その様子を見てレイドさんは続けて言う。
「でもな、今のラクシュミがしてる事は間違ってると俺は思う。」
「え…?」
「弱かったのはお前だけか?騎兵として怪我は付き物だが、重傷を負う程の怪我をするという事は、エドワルドも弱かったって事だ。ラクシュミが自分を責めて、一人で探索へ行って小さいとはいえ怪我を沢山作れば強くなれるのか?
万が一それこそエドワルドが負傷した様にお前も取り返しのつかない怪我をしたら、誰が一番傷つくと思うんだ。ラクシュミが今してる事は、『無謀』な事をしてる。俺はそう思う。
エドワルドを失うかもしれないという恐怖は、ラクシュミにしか分からない事かもしれないが、
あいつだってもしかしたら同じ事を、自由に動けない身体を抱えてながら思ってるかも知れない。違うか?お前が今してる事はただの独りよがり…。に俺は見える。」
「…。」
そんな風に考えた事がなかった。
けれど、レイドさんの言う事は…間違っていない。
「けど…私どうしたら…いいの…?理由はどうであっても…強くならなきゃいけないのは…間違ってない。そうでしょ…?レイドさん…。」
混乱しながらも、それだけは間違いではないとそう思った。
「そうだ。それは間違いない。じゃぁラクシュミの言う『強さ』とは何だ?」
「私の言う…強さ…。」
問われた事をジッと考えてみる。
「私の思う強さ…エドワルドさんの…隣に並んで…歩く…事…。護られるだけじゃなく…共に歩く…強さ…。それも…”強さ”って言える…?」
そう不安げに顔を見上げ問うと、柔らかく笑い、私の頭にポンと手を置いた。
「いいんじゃないか?どう思うかは、自分しか分からない。ラクシュミがそう思うんなら、それも立派な”強さ”だ。」
「じゃぁやっぱり、一杯探索行って身体鍛えなきゃ!こんな風にいじけてる場合じゃないよね!」
そう言って立ち上がり歩き出そうとする私の腕を掴み止めると大きくため息をつく。
「まて!全く…。あのなぁ、一人で何でも抱え込むから、そうやって爆発するんじゃねぇの?」
「だって…。」
「身体鍛えるんだって一人でやるより、誰かと一緒にやった方のが効率がいい。比較ができるだろ?それにがむしゃらにやれば、腕が上がる物でもない。辛い時は誰かに頼ったっていいんだ。」
というと腕を離し自分も立ち上がると、
「自分の気持ちに閉じこもってないで周りもっと良く見ろ。俺もいる、エディソンだっている。クロードさんだっているだろ?家族や仲間がいるんだ。頼っていいんだよ。ほら、探索。行くんだろ?」
というと手を差し出す。
「それから、エドワルドともちゃんと話せ。お前ら夫婦になるんだろ?お互いに本音が言えないでどうすんだ。」
というとフッと笑みを漏らした。その笑みを見て、またボロボロと涙が零れる。
「うん…。うん……。レイドさん…ありがと…。」
俯いて小さくそう呟くとキッと涙を拭き、レイドさんの手を取ると
「レイドさん!探索、一緒に行ってくれますか!」
と叫んだ。
「ああ、丁度行くところだ。甘くないぞ?頑張れ。」
と彼はそう言い、暗く安寧ならぬ気を放つ森の深部への入り口に2人並んで足を踏み入れた。
この探索から帰ったらエドワルドさんと話そう。
私の気持ちを伝える事も、彼の気持ちを受け止める事も『強さ』だと信じて。
fin.
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